インドの若者 <インド ムンバイからゴアへ③>
右往左往、という言葉がその時の私にはぴったりだったようだ。
近づいてきたのは若いインド人男性で、「あなたが何度も目の前を行ったり来たりするのを見ていました、何か困っているんですか?」と声をかけてくれた。
事情を話して、もしや同じ方向ではないかと期待を込めて彼の行き先を聞いた。
心の中で、乗り逃していた場合を考え始めていた。一度ムンバイ中心に戻ってしまうとヨガの訓練コース開始は明後日、直前では電車の予約が難しく、飛行機は高い。とにかく同じ方向へ行くバスに乗って、本来の目的地へはそこから向かおうという考えが浮かんでいた。予約なしでも、席が空いていればそこはインド、なんとかなるはず!
「僕は大学生で、就職の面接で今朝ムンバイに来て、これから家に帰るんです」。残念ながら全く違う方向だった。
予約したときのメールを見せるよう言われ、その通りにすると、「電話番号はないけど、会社名で調べて電話します」。
なんて親切!!いや、私はなんでそのことに気づかなかったのか?!(恥)
「でも、あなたのバスは何時なんですか?」
「そろそろ来るはずです」彼はそう言いつつ、早速、自分の携帯で調べてくれた。画面をみながら「似たような名前がいくつかあるけど…とにかくかけてみます」。
電話口で、彼は英語ではなく現地の言葉で話し始めた。最初の電話は別の会社だった。
次の電話でも英語ではなかったが、しばらく話し続けていたので、どうやら2回目でビンゴのようだった。電話を切ると彼はこう言った。
「時間は過ぎているけど、これから5分後くらいには到着するそうです」。
よかった!!!少なくとも乗り損ねてはいなかった!
お礼の気持ちを最大限伝えたいのに、シンプルなthank youしか出てこない。自分の頭のまわらなさを残念に思いつつ、もっと早くに電話するべきだったと伝えた。
「相手が英語が話せない場合も多いから、僕がかける方が良かったんですよ。じゃあ二手に分かれて探しましょう!もうすぐ着くはずです」
入ってくるバスの正面の表示に目を凝らしながら、これじゃない、これでもないと足速に歩いていくと、うしろから声がした。
つづく。