世界ひとり旅日記🐾

ひとりで20か国以上を旅した経験を中心に、あれこれ書いています

標識のないバス停 <インド ムンバイからゴアへ①>

ゴアでヨガのTTC(指導者訓練コース)に参加しようと決めたのは二日前だった。

一週間前からムンバイに滞在していた。そこから移動の選択肢は、その時点ではバスのみ。12時間以上かかるため、眠っている間に移動できる夜行バスを選んだ。

オンラインで予約するのが一番よ、“MakeMyTrip“(予約アプリ)を知らないの?…いかにも慣れた感のある、宿スタッフの言葉を受け、ブラウザから検索。条件は、座席ではなく寝台タイプで、滞在中のムンバイ南部・コラバの近くで乗車できること。

条件にあうバスを見つけ、予約しようとしたが、クレカで決済ができず。何度か試したのち、外国のクレカはNGの場合があるというネット情報を思いだし、再度訊いたところ、同じスタッフから“GOIBIBO“(別の予約アプリ)ならできるとの回答。

知ってるなら先に言ってくれよ、と喉元まで言葉が出てきそうになるが、今更言っても仕方がない。

結局、そのアプリでは宿付近または鉄道駅近くから乗車できるバスを見つけられず、再びスタッフにどこから乗るのがいいか相談した。ここがいい、ここなら紹介するタクシーが以前行ったことがある、との一言で決めた。

 

タクシーは予定より20分遅れてやってきた。

スタッフが、出発時刻の1時間前に出発すれば大丈夫だとの判断でタクシーの時間は決まったのだが、渋滞を計算に入れるのを忘れていたようだ。出発する前に、同宿のインド人との会話の中で経緯を話したら、2時間前に設定すべきだったよと言われる。不安になっていたところに更なる遅刻。あーあ、もう。

当然のように、宿から市街中心部まで渋滞。運転手は、たくさんお客さんがいて大変だったんだ、でも私は腕がいいから大丈夫間に合う、などと言いながら、クラクションをしきりに鳴らす。これは誰もがやっていることで、空調を付けずに窓を全開にしているから、皆が鳴らすクラクションが遮るものなく耳に突き刺さる。

なるようになる、という、すとんと腹が座る感覚がやってきた。いつものわたしならイライラや冷や汗がやってくるところが、これがインドへの適応なのか、どうか。

われ先にと、ギリギリまで近づいて横入りしようとする運転技術、または車体感覚に感心しながらも、車体の無数の傷に目が止まり、苦笑する。そうしているうちにライトアップされたCST駅(世界文化遺産)や植民地時代の建築物が見えてきて、テンションが上がる。渋滞のおかげでしょっちゅう停車するので、その瞬間に写真を撮る、ちょっと前進して違う角度からまた撮るということを繰り返す。次第に、これでムンバイを去るのだという寂しい気持ちになった。

やっとのことで渋滞を抜けると、怖くなるほどのスピードで他の車の間を縫うようにタクシーは走っていた。

 

それは、陸橋と下の道路が合流する場所にあった。何台ものバスが、およそ50メートル以上にわたって路肩に停車しては出発していく。

タクシーから下ろされたのは、なかなかの交通量のある幹線道路沿いだった。既に21時半、バスの発車時刻は21時40分。運転技術が確かなのは本当だった、と言いたいところだけれど、運が良かっただけか。

どこにバス停があるのかとタクシー運転手に訊くと、バス停はない、との返事。バス番号を見て探せ、予約した時に書いてあっただろう、と言われる。

予約確認のメールにそんなものは書いてない。電話番号さえない。とりあえず停まっているバスを順々に見ていくと、正面や横にバス会社の名前と行き先が書いてあることが分かった。

時間が迫る中、じっとりとした汗をかきながら、停車しているバスの運転手に次々に声をかけて予約メールを見せて歩く。タクシーの運転手も心配したようでしばらく残っていたが、とにかく訊いてまわれ、との言葉を残して去っていった。

 つづく。